おはようございます。
カイゼン研究会 宇賀です。
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(会社コラムはこちら)
海外駐在ニュースでは
ちょっと気になる中国・東南アジアの時事ニュースをお届けします。
(現地社員との話のネタに使っていただければ嬉しいです。)
中国政府が
昨年末から問題視している
「開票経済」をご存じでしょうか?
(日本語だと、請求書・領収書経済というイメージ)
実体経済では価値を生まず
インボイス(発票)を出すことが
目的になっていることを揶揄しています。
架空売上を作ったり、
ペーパーカンパニー内で
売上を循環させたりすることで
経済活動が活発になっているように
見せる、水増しするような行為です。
日本だと
脱税や
架空売上など
不正会計につながる
イチ企業の問題として
イメージしてしまいますが
中国では
地方政府が関わり
大規模な経済圏ができてしまっていることから
「開票経済」と名付けられ
去年末より
本格的に取り締まり対象になっています。
8月に
2026年上半期の
取り締まりの成果が発表され
・約130万社の監視対象企業
・その発票金額合計が前年比約38%減
・発票100元あたりの税収が13%増
実体のない取引を取り締まり
税収の効率を上げた。という
どちらかというと
税制度の成果としてニュースになっています。
しかし、
実際はそんなシンプルなものではなく
このニュースを掘り下げると
中国ならではの
地方政府間の競争の変化が背景にあり
かなり面白い問題であることが分かります。
おおまかに
この変化を説明すると
もともと
地方政府同士の競争はありましたが
1994年に
中国で「分税制」が開始されたことが
きっかけで競争が激化します。
それ以前の税収は
中央と地方で取り分が決まっておらず
毎年の交渉によって決めていました。
(よしなにやっていた)
当時は
地方が自由に使える財源が
多い方が良いという考えで
そのような運用になっていた背景があり
その考え方は
毛沢東時代に
中央がほぼ税収を吸い上げて
地方経済が活性化しなかった
反省から来ています。
しかし
1993年に
あまりにも中央の税収が少なく
マクロコントロールに使える資金が無かったり
金融政策ができないため
中央が地方からお金を借りるという、
国家としては珍しいくらいの
財政赤字状態になりました。
そんな状況を脱するために
税収の取り分を固定化した
(例)付加価値税
中央:地方=7.5 : 2.5
(今は5:5)
というのが
「分税制」の導入です。
日本で言うと
国の消費税と地方消費税に
分けられて、
それぞれの
財源になっているのと同じイメージです。
1994年のこの制度が起点となり
地方政府にとっては
支出はあまり減らないのに
収入が一気に減るという事態に陥ります。
そこで
・税収(財源確保)のため
・自分の省のGDPを増やすため
強烈な企業の誘致合戦が始まっていきます。
大きな工場を建て
従業員がその地域で生活することで
その省が豊かになる。
加えて
省の幹部にとっては
GDPが増えることで評価され
出世競争を勝ち上がることができる。
こんな
税収による財源の確保と
GDP人事評価がつながり
競争が激しくなります。
しかし、
企業を誘致するには
その地域のインフラ(道路や水道、電気)が
整っていたり、
暮らす人の生活が
しやすい環境などがないと
勝てません。
そこから
地方政府は
土地使用権を売り、インフラ開発を加速させていきます。
地方債が発行できない
開発資金が集められない
という地方の弱点を
地元銀行や
融資プラットフォームなどの手段で
迂回しながら、
インフラ投資開発を進めていきます。
これが後の中国の隠れた地方債務問題や
シャドーバンキングにつながりますが。。
(過去記事:「中国の隠れた債務問題をわかりやすく」)
https://note.com/like_fish4618/n/na49c44ae6287
土地の値段が上がっていく間は
このサイクルは順調に進んで行き
むしろ
土地使用権売却益が
地方政府の主力の財源になっていきます。
(税収より多い状態)
そんな流れで
もともとの
財源問題まで解決していき
各地方に経済開発区が大量に作られ
企業の誘致競争も過熱していく中で
土地価格の下落が始まります。
財源確保とGDP工場のための
企業誘致。
企業誘致のための
土地売却、インフラ投資開発。
そうしている間に
財源の主力となった土地開発と売却。
この主力が
突然崩れ出したことで
再度、企業誘致による
財源確保に力を入れ始めたのが
2021年以降です。
ここから冒頭の問題が起こります。
今までの企業誘致政策と
何が変わったかというと
インフラ開発が
当時ほどできなくなったため
工場など
実体経済を持った企業を誘致するのでなく
企業登記のみを
地方に持ってこさせるような方法に
変わっていきます。
登記場所で
発票を切ってもらい
その地方で発生した所得や税収にする。
経済開発区にたくさん投資して
固定資産を抱えながら
企業誘致するのではなく
企業の登録
子会社の登録
登録のみで
経済的に実体のない
企業から発票を切ることで
税収やGDPが上がっているように見える
ということが大量に起きたのです。
地方政府も
企業を登録してくれたら
その企業に税を還付するなど
企業にとってもかなり
メリットのある施策を打ち出し
各省が還付額で競い合う
という状態を生み出しました。
これが
今回の「開票経済」につながります。
以前の企業誘致では
地方政府としては
インフラを整える
工場建設する
サプライヤーや物流会社にも来てもらう
などなど
時間とコストをかけて
やっと生産が始まり
地方経済にカウントされ出します。
(これが健全です。)
今回の
「開票経済」につながっている
企業誘致合戦は
登録、発票の場所を動かすのみで
実体の価値は生まない代わりに
数字上では
GDP、税収、売上など
短期間で増えているように
見せることができます。
景気的に土地に
頼れない状況となっているのに
GDPでの評価
財源の確保
それによる激しい競争を生む制度自体は
続いてしまっているため
安易に数字を作る方法に
地方政府が流れてしまっているというのが
この以前より劣化した競争
「開票経済」につながってきているのです。
この財源確保競争を
中央政府も黙認してきましたが
以前も書いたように
中国の省ごとの競争が
企業環境や、ムダな値下げ競争など
不健康な市場環境を生み出していること。
(過去記事:中国企業の値下げ競争が起こる理由。)
そもそも
経済の温度計である
GDPの元となるデータが
水増しされるリスクがあり
経済の実力が正確に
可視化できないこと。
そのような理由から
近年は本気で取り組む様子
実体のない企業はつぶしていく
ということが進められています。
しかし、
この問題の根本である
財源競争やGDP競争が残る限り
監督やチェックを強化しても
同じような問題が出てきそうです。
ちなみに
日本では
逆の問題が
議論されていることが面白く
地方交付金が減らされるから
地方が頑張って税収を上げる努力をしない
と言われます。
地方交付金が減らされるというのは
少し言い過ぎで
税収が増えた分はざっくり言うと
75%が国に、
25%が地方に残る仕組みになっており
地方が努力するインセンティブが
少なすぎるのではないかという
議論がされています。
中国の状況とはかなり
スケールは違いますが
似たもので言うと
日本でも
ふるさと納税で
各地方自治体の
競争が過熱した実績はあります。
その収入が
国には取られず
地方で自由に使える財源になるという
インセンティブは
国の違いによらず
かなり強力なモノだということが
わかります。
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