こんにちは。
カイゼン研究会の宇賀です。
中国では
ほぼ初めての景気停滞局面を迎えていますが
日本を始め各国で、このような局面は
今までにも数多く経験してきました。
この好況、不況というものは
コントロールできないものなのですが
企業の売上は、これに大きな影響を受けます。
不況を乗り切って、
過去最高益を出した企業や経営者が、
当時の戦略を解説したりして
成功要因を検証する例は数多くあります。
「事業の選択と集中をこうした」
「新商品を開発し、販売網を刷新した」などなど
販売面での派手な成功事例が本になったりますが、
生産面での努力には
あまり触れられていないことがほとんどです。
なので、今回は
景気停滞に直面し、
売上増加が見込めないときに(マクロ)
各国の企業は内部で地道にどのような取り組みしていたか(ミクロ)
を見ていき、今の中国でのヒントにしていければと思います。
(1)1980年代のアメリカ
(2)バブル崩壊後の日本
(3)今後の中国
財政赤字と貿易赤字
双子の赤字に泣かされていたアメリカでは
企業業績も悪化するという明らかな不況状態でした。
そんな時に開始されたのは
産学提携によるベストプラクティスの研究です。
当時アメリカ市場で独り勝ちしていた
日本企業の研究に乗り出します。
もともとは
労働力が安いからコスト競争力で負けている。
これはどうにもならない、
生産拠点を低コストの国に変えていくしかない。
という考え方が主流で
手本にするという意識はなかったようですが
価格だけでなく、
品質や早さ・効率という側面でも
学ぶ面は非常に多いということで始まりました。
年功序列制など制度面に注目する研究から
主に自動車産業の生産方法に関する研究まで
学者と企業が一体となって進め、その成功要因を理論化する
ということが進められました。
(the machine that changed the worldという書籍にもなり大きく広まりました。)
その研究の成果の一つが
リーン生産方式であり
生産における作業や生産効率でなく
全体のリードタイムを短くする
そして
それは生産だけでなく
企画から設計にまで適用されている。
という
企業内部の違いを発見し
アメリカ企業はその理論の実践を始めます。
GMやボーイングは地道にコツコツ内部に取り入れることを続け
その後の復活につながります。
そして、その後もリーンスタートアップなど
ITやサービス、ベンチャーへの理論の応用が進んでいます。
もちろん、
もっと上流である事業の選択と集中などに
スポットライトが当たっている研究も多くありますが、
企業内部では、事例の研究、理論化、
内部での実践を進め、売上向上が見込めない局面でも、
基本であるQCDのレベルアップを地道に取り組んだということになります。
ちなみに
この時期、1950年代に日本で品質管理や統計手法を広め
QCの基礎を広めたデミング博士が
アメリカで再注目され、80歳にもなる中で
品質管理についての著書(out of crisis)を出します。
アメリカで出版され、
品質→生産性→コスト低減→市場の獲得
ということを地道に続けるメカニズムが一番の競争力だ!
というアメリカ企業を叱咤激励する熱い内容で
各国で翻訳され、
製造業に取り入れられますが
その頃、絶好調だった日本では翻訳もされず見向きもされない状況でした、、
(2022年になって初めて翻訳されました。)
このようになりふり構わず
成功している企業の研究から
自分たちの今の当たり前を疑い、
内部に取り入れていくことを
地道に進めるということが
不況のアメリカでは行われていました。
不動産、金融で好調だった内需が
バブル崩壊とともに頭打ちになり
政府や産学連携を進めるというよりは
各企業の自助努力での海外進出が本格化します。
90年代、00年代は
製造業の海外生産比率が上昇し
伸びている新興市場を狙った拡大が始まります。
(これらは経営上の戦略ですが)
デフレが続き、生産台数がもうこれ以上伸びない
状態に初めて陥った、日本の生産拠点では
原点に戻りコスト・生産性管理のレベルアップが始まります。
トヨタ自動車の例を挙げると
まずは工場総費用システムという
工場の人件費、変動費、固定費の洗い出しと
リアルタイムでの金額把握、可視化が進められます。
生産数は増加するという前提の時代の管理は
変動費管理が中心でしたが
保全費やエネルギーなど固定費として
扱われていたものも
生産数が変動する中での
変動費管理していくような取り組みが進められます。
生産性にしても
毎月の能率管理による歩合給制度をやめます。
全職場で能率の向上を競争させ、順位付けし、
成果を測定し給料に反映していましたが
生産数が伸びない状況では
各ラインや工程間での不公平感が出てきていました。
(自動化しやすい工程と労働集約型の工程ではカイゼン代が違い、能率アップの難易度が違うなど)
それでも目標能率達成するために
人を別の組や職場に移動させたり、管理者がラインに入って
インプット工数を下げたり、目先の能率を達成するために
本質ではない方法がとられたりしていました。
そこから
不公平感を取り除くために
すべての組での競争ではなく
似たような工程やショップごとに分けて基準を決めたり
目先の能率を追いかけず
長期的に意味のある改善を促すために
月ごとの歩合管理ではなく
年間での生産性目標と活動計画の設定
計画に対しての実績の進捗管理とチェック機能を持たせ
歩合給を決定する場から、
年間目標達成のための改善内容をチェック、議論する場に
変えていきました。
他の企業例を挙げると
TOTOでの水栓金具の組み立て工程では
それまでのベルトコンベア方式から、
セル生産での1人方式に切り替えという
大きな変化を達成し、生産性の向上が図られた例もあります。
これらに共通するのは
生産数の増加という前提から
変動前提、
生産が減っても生産性は落とさず
コスト低減を続けられるような制度や生産に作り替えていく
ということを組織全体で進めたということです。
オイルショック時代に
一度コストや生産性の見直しは
どの企業でも行われ、
それが日本企業の競争力につながっていましたが
やはり、
景気が過熱していく中で
どうしても出来高重視の生産や組織運営になっていきます。
作れば作るほど儲かる環境なので。
1度立ち止まり、
生産数が減っても利益の出る
インプットをコントロールできる運営に変えていく努力が
不況下では続けられていたのです。
初めての景気停滞に直面し
売上の急な上昇は期待できない環境です。
そしてこれは誰のせいでもなく、各国も通ってきた道です。
人をふんだんに投入し、残業し
生産数を増加させること=売上の増加
というのは成り立たなくなります。
海外市場への進出や
より労働コストの低い国への移転というのは
企業の戦略としてあると思いますが
生産拠点としては
魔法のような解決策はなく
地道な損益分岐点を下げる取り組み
地道なレベルアップが求められます。
そのためには
各国がしてきたように
・現状の測定
・基準の見直し(生産量ではなく時間を軸としたモノサシの設定)
・部分ではなく全体としてのリードタイムの短縮
・アウトプット数に準じたインプットのコントロール
(オーダー数が下がった時に、投入リソースも下げ、生産性を保つ)
これらの管理、運営の見直し
評価尺度を変えていくことが必要になってきます。
中国企業でさえ
インセンティブ重視、
ストックオプションや
出来高給によるモチベーションコントロールは、
好況では機能しますが
上昇が続かない中では見直しを迫られると思います。
売上が伸びない中でどう原価を下げるか?
原価を下げるためにはどんな指標を作り、
どのような行動を評価してあげるべきか?
この不況の中で
従業員にも明らかに危機感があるので、
今まで手を付けられなかった部分に
切り込むチャンスなのかもしれません。
長々と書いてきましたが
最後までお読みいただきありがとうございました。
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