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カイゼン研究会(a-Sol上海) 宇賀です。
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2026年6月15日、中国政府の国家発展改革委員会は、
「重点業種の省エネ・二酸化炭素削減3ヵ年行動に関する通知」を発表しました。
中国は2020年に、
「2060年までのカーボンニュートラル実現」を目標として掲げています。
その後も毎年のように、高エネルギー消費産業に対して、
省エネ目標や基準となるエネルギー効率の水準を設定してきました。
ただ、
今回の3年計画は、これまでの政策よりもかなり踏み込んだ内容になっています。
単に「脱炭素を進めましょう」という方向性を示すだけではなく、
対象企業を具体的に管理し、設備改造の進捗まで政府が確認していく枠組みが示されているからです。
アメリカで環境政策の優先度が下がる中、中国は脱炭素を続けている
近年、アメリカでは環境政策やSDGsに対する優先度が以前より下がっているように見えます。
ニュースや報道でも、以前ほどカーボンニュートラルや脱炭素という言葉を見かける機会は減ってきました。
一方で、中国では脱炭素政策の優先度を下げていません。
むしろ、政府がより具体的に関与しながら、
省エネ、二酸化炭素削減、設備更新を着実に進めていく姿勢が見えます。
今回の通知を見ると、中国にとって脱炭素は単なる環境政策ではありません。
それは同時に、
設備投資を促し、産業構造を調整し、競争力の低い企業を淘汰していく政策でもあります。
今回の3年計画で特に重要なのは、
地方政府に対して、企業別の改革リスト作成が求められている点です。
2026年7月までに、地方政府は対象企業ごとの改革リストを作成し、中央政府へ提出する必要があります。
その後、政府機関が以下のような項目を確認していくことになります。
つまり、今までのように重点産業へ大まかな指示を出すだけではなく、
企業単位で進捗を管理していく仕組みになっているのです。
これはかなり大きな変化です。
今回の政策で注目すべきなのは、
中国政府が脱炭素を「環境対策」としてだけ見ていないことです。
むしろ、中国経済の重要テーマである、
内需喚起や設備投資の拡大と結びつけている点が特徴です。
現在、中国では不動産投資が大きく悪化しています。
これまで中国経済を支えてきた不動産開発の勢いが弱まる中で、
政府は別の分野で投資需要を作る必要があります。
そこで重視されているのが、製造業の設備投資です。
老朽化した設備、エネルギー効率の悪い設備を、
政府の関与によって更新させる。
その結果として、省エネと二酸化炭素削減を進めながら、
同時に製造業向けの設備需要を生み出していく。
今回の政策には、そうした狙いがあります。
今回の3年計画は、2026年から2028年までを対象としています。
普段、中国政府の政策文書は抽象的な表現が多いのですが、
今回の通知では、実施内容がかなり具体的に示されています。
条件を満たす設備投資に対しては、
20%の補助金、資金支援、税優遇などが用意されるとされています。
つまり政府は、企業に対してこう言っているようなものです。
「古い設備を更新しなさい」
「エネルギー効率を改善しなさい」
「そのための支援はする」
ただし、支援がある一方で、未達企業への圧力も強くなっています。
今回の政策では、2028年までに設備改造が間に合わない企業や、
エネルギー効率のKPIを達成できない企業に対して、
市場からの退出を勧告する可能性も示されています。
また、エネルギー効率の悪い企業に対しては、
電気料金を上乗せする「懲罰電気価格」のような仕組みも実施される見込みです。
つまり、今回の政策にはかなり明確なメッセージがあります。
投資して競争力を高めなさい。
それができない企業は、市場から退出すべきだ。
これは単なる環境規制ではありません。
中国全体で過剰になっている生産能力に対して、
競争力のない生産能力を減らし、
必要に応じて統合していく政策でもあります。
言い換えると、
残す企業と淘汰する企業を選別する政策でもあるのです。
現時点では、対象となる企業リストはまだ公表されていません。
ただし、おそらく国有企業が中心になると考えられます。
中国では、同じような産業や製品を作る企業が、
各省ごとに存在しているケースが多くあります。
これは、
各地方政府が自分たちの省の利益や雇用を守ろうとするためです。
その結果、中国全体で見ると、似たような企業や生産能力が過剰に存在することになります。
今回のように中央政府が企業別に監査し、
設備効率やエネルギー効率を確認していくことで、
こうした重複した生産能力の最適化や淘汰が進む可能性があります。
関連記事:
中国内の価格競争についてはこちら
https://kaizenlab-china.blog.jp/archives/12774145.html
今回の通知を出した国家発展改革委員会は、
中国経済を見るうえで非常に重要な政府機関です。
もともとは「国家計画委員会」という、
計画経済を管理する部署でした。
改革開放以前の中国では、
企業ごとの生産量やモノの価格まで、国家が計画によって決めていました。
その中心にあったのが国家計画委員会です。
現在の中国は市場経済の要素を大きく取り入れていますが、
国家発展改革委員会は今でも非常に強い権限を持っています。
マクロ経済、投資、産業政策、価格政策、エネルギー政策など、
経済政策をかなり広い範囲で横断的に見ている機関です。
そのため、国家発展改革委員会は
「小国務院」と呼ばれることもあります。
今回の脱炭素政策も、単なる環境部門の政策ではなく、
中国全体の産業政策、投資政策、エネルギー政策として見る必要があります。
中国の脱炭素政策で特徴的なのは、
環境規制と経済の推進を同時に達成しようとしている点です。
一般的には、環境規制を強めると企業のコストが上がります。
設備更新、排水処理、有害物質対策、省エネ設備の導入などが必要になるため、
企業にとっては負担になります。
日本でも高度経済成長期以降、
有害物質や排水規制の強化によって、
処理設備への投資に耐えられない企業が市場から退出する事例がありました。
中国の場合、それに近いことを、
政策としてあえて進めているように見えます。
つまり、環境規制によって企業に負荷をかける。
その負荷に耐えられる企業には補助金や税優遇を与え、
設備投資を進めさせる。
一方で、対応できない企業は市場から退出させる。
その結果として、
省エネ、二酸化炭素削減、設備投資、産業再編、過剰生産能力の削減を同時に進める。
ここに、中国の脱炭素政策の特徴があります。
今回の「重点業種の省エネ・二酸化炭素削減3ヵ年行動」は、
中国が脱炭素政策の優先度を下げていないことを示しています。
ただし、それは単なる環境保護のためだけではありません。
中国政府は、脱炭素を通じて、
製造業の設備投資を促し、
老朽化した設備を更新し、
競争力のない企業を淘汰し、
過剰生産能力を調整しようとしています。
つまり、中国の脱炭素政策は、
環境政策であると同時に、設備投資政策であり、産業再編政策でもあるということです。
アメリカなどで環境政策の優先度が下がっているように見える中でも、
中国は脱炭素を経済政策の一部として組み込み、
政府主導で着実に進めています。
今後、対象企業リストが公表されれば、
どの産業、どの地域、どの企業が重点的に再編されるのかが見えてくるはずです。
中国の脱炭素政策を見る際には、
「環境に良いか悪いか」だけではなく、
その裏側にある設備投資、産業再編、過剰生産能力の調整
という視点で見ることが重要です。
本日の海外駐在ニュースはここまでです。
ありがとうございました。
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