こんにちは。
カイゼン研究会の宇賀です。
今回は、
産業革命以降の製造業における課題と
生産システムの進化についてです。
そしてこの200年の間に
どのような生産システムが流行していき、
今はどういうトレンドになっているかということを話していきます。
まず大まかな結論を言うと
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■大量生産の時代(需要大が前提)
(0)熟練による請負制(現場全権)
(1)テイラーシステム(時間研究、動作研究)
(2)フォードシステム(標準化、分業、コンベアー)
(2)´GM経営管理(管理会計による経営数値管理)
■多品種少量の時代(需要変動が前提)
(3)トヨタ生産システム(リードタイムと人的資産)
(4)スマートファクトリー、インダストリー4.0
フォードシステムまでは旺盛な需要を前提とした大量生産、時間をできるだけ短縮し、速く多く造ることが求められ、作業者は熟練から単一化が進められてきました。
現在の時間管理や計画と実行の役割分担、作業効率の追求はこの時代でほぼ完成したシステムです。
その後、トヨタ生産システムから需要に合わせた生産、リードタイム短縮による在庫の最小化が求められ、単純な作業をするという工場から異常を検知し、それをチームで解決するということが仕事だと変化しました。(人がコストから資産へ)
そして、スマートファクトリーが出てきました。
まだ新たな生産システムとしては確立されておらず、
現状のベストプラクティスはリーン生産システムです。
しかし、
リーン生産システムの課題は人による異常発見のばらつきと問題解決能力の不足です。
そこで、IT、インターネットなど新技術を導入し、人の手を介さない問題の発見、熟練のカン、コツに頼らないデータ管理されたラインの構築、人の作業代替的な効果とデータ収集、分析、予測がメインのトレンドとなっています。
200年の歴史を見ていくと
(1)新しい生産システムが考え出される
(2)競合や別産業でも研究、導入が始まる
(3)導入しようとしたが完全な実行ができない
(4)実行ができない要因を新技術が解決する
以上のようなサイクルが回っています。
テイラーシステムの課題は、設定した時間通りに実行されない。
それがコンベアー等で解決されたものがフォードシステムとなり、
変化する需要と工場労働者の陳腐化、
という課題に対してトヨタ生産システムが注目を浴びました。
しかし、
異常発見、モノの滞留の発見を起点とした問題解決がメリットなのに、
それを発見する人に“ばらつき”があるというのが課題として残っています。
(人によって発見の能力が違う、これを揃えるために標準を作るが、上手くいかない。ここで止まっている工場が現代では多い)
その課題がデジタルやITの活用によって、
データ(事実)に基づいて発見、
判断していけるようになり、
トヨタ生産システムの課題が克服されようとしています。
(デジタルによる異常発見の自動化)
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まとめが長くなりましたが、以下から詳細に入ります。
まず現状の実態を見ていくと、
まだフォードシステム、GM経営の製造業が大部分です。
アメリカではオイルショック以降、
トヨタ生産システムの学術的研究が進み、
自動車のイメージが強いトヨタ生産システムという名前でなく、
リーン生産システムとして確立されました。
ボーイング、IBMといった製造業だけでなく、
アマゾン、病院、飲食店等、多岐にわたる業界で導入が進んでいます。
現状のベストプラクティスとして認知されており、
どの業界でも利用される手法となっています。
(リーン生産システム導入サポートの会社も驚くほどあります)
しかし、
アジア地域、特に中国では、
需要が旺盛だったこともあり、
フォードシステムのまま現在に至っていることが多く、
外資企業では積極的にリーン生産システムが導入されているという現状です。
もちろんこの時代の長所もあり、
一足飛びにスマートファクトリー
(自動化、ロボット、データ収集、AIなどなど)を進めることができます。
ロボットなどは投資(自働化)した分だけ人は減るのですが、
リーン生産システムが導入されていないため、
異常発見やモノの滞留の発見及び解決をできる人がいないというのが課題です。
なので経営層の投資頼みになってしまい、
管理職や現場からアイデアが出てこず、
作業者や管理者も単調な作業に従事するということが続いています。
今後、異常発見やモノの停滞が見つけることのできないという課題は
スマートファクトリーの登場によってかなり克服されてくるので、
あとはそのデータ(事実)、異常から問題解決を業務として遂行できる人が
求められていくというのがスマートファクトリー以降の課題になってきます。
話がそれたので
生産システムの歴史に話を戻します。
経営学でもよく登場するイギリス人経営学者で、
実際は学者でもあり、製鋼工場の工場技術者そしてコンサルタントをしていた方です。
ストップウォッチを四六時中持っていた人らしく、
時間や動作分析による標準作業を確立されました。
出来高しか基準がない中で、
お互い不幸せな労使の賃金交渉に課題意識を持っており、
それまでの出来高制給料ではなく、
徹底した作業時間の計測の結果を基準とし、
その作業時間に基づいて速く作れた作業者には報酬を多く、
作業時間を超えた作業者は少なくという賃金体系を提唱しました。
造り過ぎを防止するような賃金体系に見えますが、
あくまでも目的は客観的な尺度である作業時間という基準を持った賃金体系を設定し、
生産性向上が進む制度作りにありました。
その当時は、抜け駆けしてたくさん作ると誰かの雇用がなくなってしまうという暗黙の了解があり、組織的な怠けが横行しており、生産性の向上は一向に進みません。
客観的に計測することと工場の規模が大きくなる過程で、
管理部門と製造現場(計画と実行)を明確に分ける必要が出たため、
現代のような組織が出来上がったということです。
それ以前は、
計画も労働時間も人員も賃金もすべて熟練工である請負人が決めており、工場所有者(経営者)は請負人に生産を委託するという形が通常でした。
(賃金も請負人からの支払い)
この制度では経営者は請負人の提示する価格が適正なのかがよくわからないまま毎年交渉していましたが、工場所有者が直接雇用し賃金支払いをすることで出来高や作業時間もだんだん把握できるようになったことで、徐々に請負人制度はなくなっていったようです。
(請負人は利鞘をとれなくなった。)
テイラーの功績は生産性向上と管理の概念及び組織化で
トヨタ生産方式でよく言われる
1秒にこだわるカイゼンというのはこの時点でできたものです。
基準時間をもとに計画と実行をするということを推進しましたが、当時はその計画が時間通りに完全に実行することができないという部分に課題がありました。
フォードでは当時のベストプラクティスであったテイラーシステムを採用しつつ、
残っていた課題を克服していきました。
そして当時の製造業の完成形であるフォードシステムを作り上げ、
自動車の値段を大幅に下げモータリゼーションに貢献しました。
・部品の標準化、互換性向上
これが違うので作業時間にばらつきが出ていた。
・専用設備の導入
安定した品質で単一製品を大量生産
(人手や汎用マシンに比べ安定している)
・徹底した作業分割
1歩も歩かないことが理想としてより分解をすすめ作業者ごとのばらつきをなくした
・ベルトコンベアー、流れ作業
テイラーシステムの課題であった
時間通りに実行することができない及び管理しきれないに対して作業の時間、リズムを固定化し、計画の完全実行が可能になった。
材料から完成までの一貫生産を目指し、
流れに徹底的にこだわった生産システムを完成させたのです。
これに加えて、
テイラーシステムの長所である作業カイゼンも継続し、生産性の向上を極めました。
生産システムからはずれるのですが、
GMは経営管理と需要側への働きかけでトップに上り詰めました。
当時まだ普及していなかった会計学を経営に持ち込み、
投資収益率(ROI)などを代表とする指標を各部門の責任者に課して、収益管理を行ったのです。
今では当たり前となっているのですが、
当時は営業、生産とそれぞれが自部門のみの数値を追及しており、
各部門ごとに収益にどれだけ貢献しているのかを明確に管理できていませんでした。
買収合併の寄せ集めだったGMがそこから事業部制に移行し、
事業部ごとの収益管理を徹底することで
明確な数値基準をもとに投資を行い他社とは違う先進的な経営管理で結果を出していきました。
そして需要側への働きかけとしてフォードのように単一製品ではなく、
フルラインナップに加えて計画的陳腐化、一年ごとのモデルチェンジで需要を喚起していくという戦略をとってフォードを追い抜いたのです。
現代の経営管理や営業施策でもGMのこの手法がお手本とされ今でも使われています。
生産システムの話に戻りますが、
オイルショックのころから生産すればどんどん売れていた時代から造り過ぎた分が売れず、
在庫になってしまい経営を圧迫するという状況に変化してきました。
そんな中、利益を上げ続けていたトヨタ生産システムが注目されたのです。
今までの生産システムとの違いは
需要(必要数)を基準にした生産システムであり、必要なもの以外は作らないことを追及しているところです。
もちろん今までの生産システムのメリットであった生産効率の追求は
ムダの排除という形で受け継がれていますが、
たくさん作るという形でなくジャストインタイム、リードタイム短縮を追及しています。
ここが大きな誤解を生む部分なのですが、
リードタイム短縮というのは速く生産するということでなく、
モノや情報の滞留時間を短くするということなのです。
完成品がお客様に届いて初めてお金になる、
だから、それまでの時間、つまり材料や仕掛品、完成品倉庫に置いてある時間を
なるべく短くするにはどうすればよいかというのが思想になっています。
それが在庫の最小化、小ロット生産、段替え時間の短縮につながっているのです。
過去は生産性を優先しなるべく大ロットで作るというのが主流でした。
そしてもう一つの違いは人に対する考え方です。
今までのシステムでは管理されるだけで生産コストとして扱われていた人に対して、
異常を発見する仕組みを張り巡らせ、それを二度と起こらないようにするにはどうすればよいか考えて対策を打つ
これこそが人の仕事だとして問題解決を評価の対象にしたことです。
もちろん一般の作業者も数多くいますが、
今まで工場の人にはなかったジョブローテーションを導入し
(フォードでは同じ工程を熟練させる)単調さの回避と多能工化を取り入れることをしました。
そして生産以外にQCサークルなど本来の仕事である問題解決に充てる時間活動を取り入れることで、従業員の問題解決力向上に時間を投資しました。
異常が起こったとき、対策のできる人を資産としてとらえそしてそれが品質維持への投資へつながるという考え方は今までの工場従業員に対する考え方とはまるで違っていたのが特徴です。
今まで各製造業は
生産システムのベストプラクティスを研究しながら自社に導入することで、
自社の課題を克服したり、生産システムの欠点を補えるよう試行錯誤してきました。
スマートファクトリーには新しい生産システムとして出てきたわけでは無いですが、
新技術(自働化、ロボット、センサー、インターネット、AIなど)を工場の中に利用していくいわゆる自働化、デジタル化の側面が強いです。
今までは、工場内に基準を張り巡らせ、そこから外れることは異常として検知され、
異常に対して問題解決をするという仕組みはありましたが、どうしても人の判断に頼る部分が多いのが現状でした。
その正常、異常の判断や物理的に情報を伝達するという部分を
デジタルに置き換えていくのが現状のスマートファクトリーです。
これは歴史をさかのぼると、
テイラーが時間研究で標準作業を作り出しても計画通り完全に実行できなかった。
しかし、
フォードシステムによりコンベアーによるラインスピードの固定化や部品の標準化によって克服してきたことに似ています。
リーン生産の肝である異常発見やモノの停滞の発見からの問題解決(ここが人の仕事)
この発見の部分に人によるばらつきが出ているのでうまく進まないということは
多くの企業で起こっています。
その異常発見の部分を新技術に置き換え、
データ(事実)に基づき判断し問題解決に特化した運営をするのが可能になることが
スマートファクトリー導入による生産システムの進化ではないでしょうか。
大変長くなりましたがもう一度大きな歴史の流れを見ると
(1)新しい生産システムが考え出される
(2)競合や別産業でも研究、導入が始まる
(3)導入しようとしたが完全な実行ができない
(4)実行ができない要因を新技術が解決する
このサイクルを繰り返しています。
新技術の登場でリーン生産システムの弱点が克服され、更なる新しい生産システムが生まれるのももうすぐではないでしょうか?
その時は人に要求される仕事のレベルも上がってくるはずなので、データから問題を発見する、問題を解決する
これを鍛えることが新しい時代に取り残されないためにやっておくべきことなのだと思います。
(熟練労働者が仕事を失ったようにならないために)
最後までお読みいただきありがとうございました。
